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『NEXTOURISM WRAP-UP 2024』パネルディスカッション、訪日観光政策に関する課題と展望

イベント

『NEXTOURISM WRAP-UP 2024』(2024年12月23日開催)にて行われたパネルディスカッションでは、観光庁 観光資源課長の竹内大一郎氏、弁護士の齋藤貴弘氏、TOKI代表取締役の稲増佑子氏、当機構代表理事の伏谷博之の4名が登壇し、日本の訪日観光政策に関する課題と展望について議論しました。ここでは、パネルディスカッションで議論された主要なトピックを整理してご紹介します。

●省庁間の連携

観光庁、文化庁、環境省が同一地域内で訪日観光を絡めたそれぞれ独自の取り組みを進めるケースが見られるようになった。財源としては同じ国際旅客税を活用している場合が多く、互いに情報交換し、連携し、取り組みの質の向上を実現できる体制を整備したい

●地域間連携と競争

観光地域づくりへの意識の高まりが見られる一方で、地方自治体や地域事業者間での横のつながりが十分ではない現状もある。他地域を競合だと考えるだけでなく、互いにの取り組みに関する情報共有を積極的に行い、連携を深めることが重要。円安や予算の制約などから、実現が難しい海外視察についても地域づくりの学びとして有効であり、積極的に検討してはどうか。インバウンドは国際的な都市間競争だが、国内でそれを体感するのはなかなか難しい。円安でますます海外に出ずらい状況の中、海外を知るための取り組みが必要だろう

● 宿泊税の活用と地域住民の参加

観光地域づくりには地域の滞在体験の向上が必要となるが、これに取り組むための自主財源として宿泊税の導入が拡大している。非常に期待値の高い仕組みだが、観光事業者だけではなく、地域住民を巻き込んだ取り組みに発展させることが重要となる

●円安の影響と収益構造の課題

円安により訪日客数は増加し、市場も拡大傾向しているが、一方で、労働環境の悪化も顕在化している。ニューヨークなどと比較すると日本は3分の1程度の価格に留まり、安すぎる状況にあるのではないか。価格を引き上げ、賃上げや利益が確保できる体質に転換すべきだが、実際には企業間の競争もあり、厳しい。二重価格制の導入など、適正価格の設定を実現し、収益性を改善していく必要がある。また、高付加価値化を謳いながら、円安が極端に進むことで、「安いだけの観光地」として位置づけられてしまい、日本のブランド価値が損なわれる可能性や消費額の低い客層の割合が増えるなど、訪日客の「質」の低下が起きる可能性がある

●新規市場参入の課題

観光産業は労働集約型で低利益体質が依然として改善されておらず、新規市場参入が難しい現状が続いている。ベンチャーキャピタルからの資金調達も困難。また、高付加価値化では、ハイエンド市場を目指す上で国際的な視野と経験、ノウハウを持つオペレーターの不足が問題となっている

●国立公園活用

国立公園は観光資源として高いポテンシャルが評価されているが、一方で、国主導の宿泊施設誘致は不調であるとも聞く。企業との連携による魅力的な事業モデルの構築や、地域主導の宿泊施設運営へのシフトが求められる。

●不正行為への規制強化

白タクや違法業者の増加が問題があらためて顕在化されている。規制と罰則の強化など、観光地の安全性と信頼性を高めるための法的な枠組みの検討が必要


【イベント概要】
『NEXTOURISM WRAP-UP 2024』
主催:一般社団法人 日本地域国際化推進機構
開催日時:2024年12月23日16時〜
場所: BABY The Coffee Brew Club 東急プラザ原宿「ハラカド」3階
東京都渋谷区神宮前6-31-21

【基調講演】
観光庁 観光資源課 課長 竹内大一郎氏
『観光立国 2024年の総括と2025年への展望』

【パネルディスカッション】
テーマ:「インバウンド市場、解決すべき課題と未来像」
登壇者:
観光庁 観光資源課 課長 竹内大一郎氏
一般社団法人 ナイトタイムエコノミー推進協議会 代表理事 齋藤貴弘氏
株式会社 TOKI 代表取締役 稲増佑子氏
モデレーター:当機構代表理事 伏谷博之

【特別セッション:世界の最前線トピックを知る】
テーマ:サム・アルトマンが『World』(旧Worldcoin)で描く未来社会
講演:Tools For Humanity 日本代表 牧野友衛氏(当機構理事)
聞き手:当機構理事 國友尚
OpenAI CEOのサム・アルトマン氏が設立した『World』(旧Worldcoin)プロジェクトについて、このプロジェクトを推進する企業、Tools for Humanity 日本代表の牧野友衛氏にお話しを伺います。Worldは、AI時代に必要なAIと人間を識別することを証明する認証システム「World ID」と新しい金融ネットワークの構築を目指しています。

【活動報告】
観光庁の『特別な体験の提供等によるインバウンド消費の拡大・質向上推進事業』の一環として、当機構は『日本的寛容の発見』プロジェクトを実施しました。本プロジェクトでは、グローバルリーダーを対象に、国際フォーラムとエクスカーションを組み合わせた革新的な体験プログラムを展開しました。ここでは、その実施内容と成果についてご報告いたします。