【観光新時代2023】代表理事 伏谷博之からの年頭メッセージ
皆様、新年あけましておめでとうございます。
さて、当機構は1月15日で設立から丸2年を迎えます。いよいよ2023年は、昨秋より回復基調のインバウンド再興を確かなものとして、コロナ禍の呪縛から完全に解き放たれた観光新時代の幕開けとしたい。そう心から願っています。
観光新時代とは何か。『観光の民主化』、『狭義の観光から広義の観光へのシフト』、『住民と観光客双方の利益享受の実現』など、これまでもいくつかのキーワードを掲げてこの新しい潮流について触れてきました。しかし、改めて考えてみると本当に大事なのは『観光をきっかけとして、地域に(観光に依存しない)新しい産業を生み出す』ことなのかも知れません。
イタリアの社会理論家でジャーナリストのMarco D'Eramoは、「ツーリズムは破壊的創造」であると言います。地域は、その文化や産業によって観光を引き寄せるが、観光によって破壊され、観光地として再創造されると。選択の問題でしょうが、相対的な価値を天秤にかける場合(マンションから賃貸契約者を追い出しAirbnbを営む。農地を別荘に。などなど)には、観光の誘惑は強いのも事実でしょう。こうなると、「観光による持続可能な地域の実現」というお題目も少々心許なく感じてしまいます。
Marco D'Eramoは、ツーリズムはパンデミックによって一度死をみたとも言っています。私たちはコロナ禍において、観光を支える巨大なインフラ、直接または間接的に営まれる多種多様な事業など、その多くがフリーズした未曾有の経験をしました。まさに観光の死を体験したのです。これによって生じた観光の持続可能性への疑いは、これから急ピッチで進む観光復興の陰で燻り続けることになるでしょう。しかし、むしろ、その一見ネガティブな思いこそが、観光新時代を形作る上でのポジティブな鍵となるように思います。
本年が皆様にとって幸多き年となりますように!
代表理事
伏谷 博之 / Hiroyuki Fushitani
ORIGINAL Inc. 代表取締役 / タイムアウト東京代表
島根県生まれ。関西外国語大学卒。大学在学中にタワーレコード株式会社に入社。2005年 代表取締役社長に就任。同年ナップスタージャパン株式会社を設立し、代表取締役を兼務。タワーレコード最高顧問を経て、2007年 ORIGINAL Inc.を設立。代表取締役に就任。2009年にタイムアウト東京を開設。観光庁アドバイザリーボード委員(2019-2020)の他、農水省、東京都などの専門委員を務める。